え?これも段ボール?! カワグチマック工業・川口 徹 社長にインタビューしました。

え?これも段ボール?! カワグチマック工業・川口 徹 社長にインタビューしました。
連載シリーズ
あまのすごい人 第9話 / 全9話

尼崎市南初島町に、1969年から続くダンボール工場があります。

今回は、株式会社カワグチマック工業の代表取締役社長・川口 徹さんにお話を伺いました。

銀行員からダンボール工場の2代目へ。就任の夜に救急搬送されるほどのプレッシャー、大口取引の突然の打ち切り、そしてコロナ禍での新事業立ち上げ──。

何度もピンチを乗り越えてきた川口さんが、それでも尼崎でものづくりを続ける理由をお聞きしました。

カワグチマック工業ってどんな会社?

「ダンボール」と聞くと、引っ越しの箱や通販の梱包材をイメージする方が多いかもしれません。でもカワグチマック工業のダンボールは、それだけではありません。

1969年(昭和44年)に創業し、現在は約110名のスタッフが働いています。ダンボールケースの企画・製造・販売を主軸に、包装資材の販売や倉庫内作業のアウトソーシングまで幅広く手がけています。

さらに近年は「ディスプレイ事業部」として、イベントブースや店舗什器の製作も行っています。その要となっているのが、スウェーデン生まれの紙建材「Re-board(リボード)」です。

公式サイト:kawaguchi-mac.co.jp

銀行員が家業を継ぐまでの10年

川口さんは1964年、大阪生まれ。同志社大学経済学部を卒業後、富士銀行(現・みずほ銀行)に入行しました。融資・渉外業務を担当しながら、10年近くをサラリーマンとして過ごしました。

転機となったのは1994年のこと。広島県への異動辞令が下りました。ちょうどそのとき、奥様は出産を目前に控えていました。

折しも、家業の経理を担当していた母親が病に伏してしまったことから、地元を離れることを断念し、退職を選びます。

そしてついに1996年、家業・カワグチマック工業へ入社します。銀行員からダンボール工場へ──その転身には、思った以上の落差がありました。

就業規則が法令に則しておらず、労基署に届け出られてもおかしくないレベルだったのです。

「ここからテコいれをしなきゃいけないのか……」と思わず頭を抱えたといいます。

何気なく通された部屋の机もダンボールだった。木の机にしか見えません。

社長就任の夜、意識を失った

入社から14年後の2010年、川口さんは2代目代表取締役社長に就任しました。

ところが、その就任祝賀会の席で突然意識を失い、救急搬送されることになります。

本来であれば祝いの席。ですが、重責に胃に穴が開く思いだったのです。

大口取引が消えた。それでも50人の雇用を守り抜いた

試練はそれだけではありませんでした。社長就任直後、頼みの綱だった大口の請負業務をいきなり打ち切られてしまったのです。

50名の雇用が宙に浮きました。

「このままではジリ貧になる」。そう判断した川口さんは、価格競争から抜け出す差別化路線へと舵を切ります。その決断が、のちに会社の姿を大きく変えていきました。

「Re-board(リボード)」との出会い

差別化の鍵となったのが、スウェーデン生まれの環境配慮型紙建材「Re-board(リボード)」です。

強度は木材並みでありながら、重さは約5分の1。紙でできているのに、建材として使えるという素材です。イベントブースや店舗什器、展示会の装飾まで、自在に形にすることができます。

川口さんは日本での展開にいち早く参入し、ディスプレイ事業部を立ち上げました。

ディスプレイ事業HP:kawaguchi-mac-d.jp

色ムラなくダンボールにフルカラー印刷ができるので柔軟なモノづくりができる。

コロナ禍に生まれた段ボール個室ブース

2020年、新型コロナウイルスの感染拡大でイベントが激減しました。ディスプレイ事業部にとって大きな打撃でした。

それでも川口さんは手を止めませんでした。Re-boardを使ったオフィス・店舗向けの「個室ワークブース」を開発し、楽天・Amazonでの販売を開始したのです(2020年12月〜)。

ダンボールで出来ているとは思えない個室ブース(カワグチマック工業ページより画像引用)

価格は7〜30万円。大手メーカー品の約10分の1という価格帯で、反響は想定を超えるものでした。PRESIDENT誌にも「ダンボール革命」として取り上げられ、全国にその名が広まりました。

ディズニーコラボのキャットタワーも人気(カワグチマック工業販売ページより画像引用)

110人が、今日も尼崎で働いている

幾度もの危機を乗り越えながら、カワグチマック工業には今も約110名のスタッフが働いています。

製造業がこの町を支えている。その静かな事実が、尼崎市南初島町にあります。

尼崎での雇用を増やし、しっかり税金を払うことが、私なりの地域貢献だと思っています。尼崎の人たちには、まだこうした紙の可能性が響きにくい面もあるかもしれませんが、可能性を追求し続けていきたいです。

まとめ

倒れて、打ち切られて、コロナが来て。それでも川口さんは前を向いてきました。

段ボールが什器になり、建材になり、個室ブースになる。そのすべてが、尼崎の工場から生まれています。

木やプラスチックを使うより、紙でやった方がええんちゃう?」と言ってもらえることを目指して、川口さんとカワグチマック工業の物語は、これからも続きます。


株式会社カワグチマック工業
住所:兵庫県尼崎市南初島町12-9
電話:06-6488-6312
公式サイト:kawaguchi-mac.co.jp

この記事を書いた人

加納 悠以 尼崎生まれ育ちの歌手

あまのならいごと 武庫之荘 あまっぷまとめ

1989年、兵庫県尼崎市生まれ。歌手、ジャーナリスト。2010年より歌手活動を開始し、15年以上のキャリアを持つ。2015年にはフジテレビ系「爆笑ものまねそっくり紅白歌合戦」に出演。自身の歌唱動画は累計750万回再生を超え、2024年には映画出演を果たすなど、表現者として多方面で活動を続けている。 2022年6月より、デイリースポーツ系列「よろず〜」や「All About ニュース」にてプロのライターとして執筆を開始。エンタメ、SNSのトレンド、地域の話題など幅広いジャンルを扱い、膨大な情報の中から「人の営みのアーカイブ」となる一瞬を切り取る。 母の営むうどん店が全国から客を集める姿を見て、地域の可能性を再確認し、地元・尼崎への深い愛着が芽生え、2023年に尼崎青年会議所(JC)へ加入。 トランスジェンダー女性としての歩みや長年の芸能活動で培った感性を活かし、単なる事実の羅列に留まらない、その場の空気感や文脈を大切にした発信を心がけている。

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